何もないのです
健康保険の切り替えで市役所に行く。
社会保険から国民保険に切り替え。淡々と書類に必要事項を記入する、
担当の女性が「それでは今はお仕事は?」と聞くので、何もしてないと
答えると「それでは無職ですね?」と言うので、・・なんか黒いカバンみたいだ。
無職のところを丸で囲むと、担当者は「お待ちください」と言って席に戻る。
カウンターの席に座り、なんか一つのことが終わったような気分になる。
「無い」のだ。なんか大切な何かが無いのだ。それでホッとする人がいる。
やり遂げた人はホッとする。無くなったことでホッとする人がいる。
何もないことに憧れた時がある。それは、何もない先に、何か有ると確信してるから
憧れたのだ。今は何もない先に、何もない。なんか大切なものを手放した気分になる。
あの山のむこうに 何がある
あの海の向こうに 何がある
行ってみたい気もするんだけど、なんだか面倒な気分と、このままってのもなと言う気分と
なんか複雑な気分。
そんな気分で、担当者の処理を待つ。5分もたたないうちに、その女性はカウンターの向こう側に座り
手続きが終わったことを告げた。そして、これからの事を簡単に説明し、いくつかのパンフレットと
印刷物を僕に寄越し、はい、これでOKみたいな感じで僕を送り出した。
”それでは無職ですね”というのを思い出して、ムカッときたのです。
担当の女性はもうカウンターを離れ、奥に引っ込んでいた。
あの山の向こうに行ってみよう。
あの海の向こうに行ってみよう。
何もなくてもいいから。
何も無いは、やっぱり寂しすぎるからね。
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