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2024年6月28日 (金)

制服

とある方から、”クミコ”さんが「制服」を歌ったと教わった。

「あの素晴らしい愛をもう一度」というコンサートの中での出来事。

あぁ、あれかと思った。何年か前にちょっと行きたいなと思ったけれど

なんか夢グループみたいな感じなんで、やめたっけ。

しかし、クミコさんの歌う「制服」は、ちょっとどころか相当聞きたかったね。

この歌は、難しすぎる。作詞家が見ている光景が理解できるのは、おそらく

僕らくらいの年代までだ。昔の東京駅の地下通路のいくつもの青春の出発が

理解できない年代には、退屈すぎる歌だ。

クミコさんはどう歌ったんだろう。

 

僕の年の離れた姉は、中学を出ると電気部品メーカーに就職した。

家の都合・・まぁ進学するだけの経済力がなかったのだが。

公立に行けたのか、私立なのかそれは僕にはわからない。

正月が明けた頃だったと思う。

こたつで母親と父親と三人で話していた。

僕はちょっと離れたところで、マンガを見ているふりをしていた。

本の向こうに姉の背中が見える。姉は、うつむいていた。

母も、うつむいていた。父は、姉の方を見ていた。姉の背中越しに

僕を見つけた父は、無言で僕を怖い目で、向こうに行くように促していた。

僕はのろのろと、その場を離れ外に出る。どれくらいか忘れてしまったけど

もういいかなと、中に入ると父はいなかった。母は何も映っていないテレビを

見ていた。姉の三つ編みの先が、こたつの上に乗っている。さっきまで

こたつにうずくまっていたのかもしれない。僕に気づいて顔をあげたばかりだったかもしれない。

何の話があったのか、そのころの僕にはわからない。

 

春になって姉は、バスに乗り電車に乗り、その工場に通い始めた。

同じような境遇の仲間が何人もいたようだ。会社での出来事や

いろんな人の話を家でしていた。僕も聞いているうちに姉の友達の

名前を覚えてしまった。そして、同じ会社の人と結婚した。

姉の青春は、そこで始まりそしてそこで結ばれた。

姉のあのこたつでうつむいていた時から、その頃まで僕は何も考えていなかったんだ。

下の姉や僕が進学するときに、上の姉はどんな気持ちだったんだろう。

その時は、そんなことは考えもしなくて進学は当たり前だと思っていた。

でもある事があって、それが姉のコンプレックスの一つになってることが

わかったときに、この「制服」が、パッと頭の中によみがえった。

あぁ、あの時。下の姉や僕が高校の新しい制服を作ってもらった時。

姉はどんな気分だったろう。唇をかみしめて、笑顔を作ったんだろうか?

きっと姉が中学を卒業する頃が、我が家の一番厳しい時だったんだろう。

ありがとうなんて言うのは、今更変だけどきっといつか、言いたい気分だ。

父母が旅立って、そんな気分が一段と強くなる。

 

制服の女の子たちは、どんな青春を送ったんだろう。

一番きれいだった女の子は、玉の輿に乗れたかな?

それぞれの青春を楽しみ、それぞれの青春に悲しみ

思い出になっていったのかな。

拓郎が絞り出すように歌う制服を聞くたびに、いつからか

三つ編みの頃の姉が浮かぶ。ありがとうね、ねぇちゃん。

いつか言おうと思う。

 

クミコさんの制服。聞きたかったけど、聞いたら泣いちゃいそうだから

いいや。

 

ところで、タブレット純さんが何を歌ったのかも、実は知りたい。

 

 

 

 

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