僕と拓郎と青い空 第二部 その4
バンドーさんの肩書は、OPマネージャーだった。
オペレーションマネージャーというのが正式だ。検品とかサービスカウンターとか
そういった裏方さんの総責任者と言ったところか。
なんか、最初から採用が決まっていたようで、履歴書をさっさとしまい込まれ
目の前に数枚の紙が置かれた。通勤費の明細を書く用紙とか、時給の書かれた
契約書とか、誓約書とかだった。通勤費はあとで提出することとして、他は
その場でサインし、ハンコを押した。
それから、バンドーさんは僕を促し検品所に僕を連れて行ってくれた。
検品所は、一階の店舗の裏側にありトラックが3,4台止められるようになっている。
そして、こじんまりとした検品事務所があり、僕を招き入れた。
検品事務所の外では、ジーンズに上だけ制服の作業着を着た、僕と同じような
年代の髪の長い男たちが、到着していたトラックの荷台から、なんか言いながら
荷物を下ろしては、数台の台車に振り分けていた。
僕は、バンドーさんに検品の責任者のハットリさんに紹介された。
ハットリさんは、まだ若いだろうけど白髪が多くて、ちょっと年齢不詳だった。
チーフと言う役職で、まぁ主任みたいなもんか。チーフと呼ぶようにと言われる。
そのほかにも、20代の女性のナカムラさんと50代これまた女性のフカワさん。
後はヒラキさんとリキタケさんと言う二人の男性社員と数名のアルバイトで検品所は
構成されてると、説明された。それからハットリチーフは、僕を店内の案内に連れ出した。
いきなり階段を昇る。え?エレベーターは?「エレベーターは原則禁止。」
それは聞いてないよ。7階の社員食堂に案内され、食堂のチーフのアダチさんに挨拶した。
6階寝具とかの売り場、5階日用品の売り場、4階子供服ほかの売り場
3階紳士服売り場、2階婦人服売り場、各売り場のバックヤードを案内されて
説明を受ける。なんか必要があるのかな?一階に戻り、靴売り場へ。
たまたま出てきた社員さんに、チーフが、うちの新人アルバイト、よろしくねと紹介してくれた。
続けて”よろしくお願いします”と頭を下げて、相手を見ると知ってる顔!あれぇ?先輩じゃん。
ミヤモトさんだった。中学の同級生のミヤジことミヤモトの2つ上のいとこのミヤモトさんだ。
同じ高校の先輩だよ。”おお、なんだよ、拓郎かぶれじゃないか。なにやってんだ?”
うん、そりゃ知ってるよね、僕らが拓郎かぶれだったことは・・・オイカワさんと同級だもんね。
”ここにはさ、先輩がまだいるから、あとで話しとくわぁ。”ちょっと、気が重くなった。
チーフがにやにやしてるのが、何となく横目に入る。「なに?拓郎かぶれって?」
「えっ?まぁいろいろいろありまして・・」説明すると長くなる。ごまかすしかない。
地下の食品売り場。鮮魚精肉、お惣菜。それぞれ責任者がいるらしい。そして、加工食品。
生鮮以外の食品を扱って店内最大の人員を擁する。のちに僕らと加工食品アルバイト軍団との
抗争とかが勃発するのだが、まだこの時は想像だにしていない。
しかし、検品係なのに、なんで全部に挨拶しに行った?わからん。
検品所に戻ると、みんな一段落したらしく、狭い事務所に集まっていた。
ヒラキさんとリキタケさんの社員コンビは、「リッキー・ラッキー」と言うコンビ名だった。
そして、アルバイトの親玉・・と言ってもとてもやさしい方だが、お店のビルの工事中から
工事のアルバイトをしていて、そのままお店のアルバイトにもなったというタケウチさん。
韓国のプロレスラーのキム・ドクにそっくりな、ワダノカツジがよろしくなって感じで
右手を軽く上げた。
なんか、岡本おさみさんへの道は、ちゃんと進めるんだろうか?
なんか不安なアルバイトの始まりだ。
最近のコメント