僕と拓郎と青い空 第二部 2の続き
つま恋に行ってくる。そう伝えても、それほどどの親も心配してくれなかった。
それだけ僕らは大人に近づいたのだ。二年半前の僕らとは違う。
そして、これからまた三人で何かをするってことが、あるかどうかも分からない。
これからの道のりで、たぶん新しい出会いがあり、新しい生き方がある。
ただ、今日のこともあの日のことも、きっと忘れないだろう。
茶畑を伝って吹いてくる風は、春の風だった。いろんな思いを包み込んでくれる
優しい風だ。
話は尽きない。尽きないが、3人とも黙り込んで歩く。
僕らは、それぞれの道を行く。クマガイとカナザワ君は違う道だけれど
当分は隣り合った道を進むに違いない。僕は、僕だけ方向が違う道を行く。
そいつが、3人を黙り込ませる。
いい天気だ。僕は”春の風が吹いていたら”を歌い始めた。クマガイは僕が歌い終わるのを
待って”春だったね”を音程を外しながら歌う。そして、3人で”春だったんだね~♪”と
歌い終わるころ、あの南ゲートにたどり着いた。
人のいない多目的広場は、ただのすり鉢のくさっぱらだ。僕らはあの日の土手に腰を下ろし
3人と過ごした3年間を思う。こいつらと出会わなければ、ここにいないし、違う道を目指して
今頃は、何をしてるんだろう?
結局僕らは、あれから拓郎のコンサートに行けてない。行けてないというより、拓郎はやらなかった。
やってはいても、”行ける”場所ではなかった。つま恋の拓郎がすべてであった。
僕らは、その晩静岡の旅館に泊まった。天井を見ながら、たわいのない話で夜は更けて行った。
それからの僕は、スーパーの検品のアルバイトに精を出す日々を送るのだった。
仕事よりも、僕はその人間関係で大いに悩まされることになる。
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