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2023年3月13日 (月)

僕と拓郎と青い空 第二部 2の続き

つま恋に行ってくる。そう伝えても、それほどどの親も心配してくれなかった。

それだけ僕らは大人に近づいたのだ。二年半前の僕らとは違う。

そして、これからまた三人で何かをするってことが、あるかどうかも分からない。

これからの道のりで、たぶん新しい出会いがあり、新しい生き方がある。

ただ、今日のこともあの日のことも、きっと忘れないだろう。

茶畑を伝って吹いてくる風は、春の風だった。いろんな思いを包み込んでくれる

優しい風だ。

話は尽きない。尽きないが、3人とも黙り込んで歩く。

僕らは、それぞれの道を行く。クマガイとカナザワ君は違う道だけれど

当分は隣り合った道を進むに違いない。僕は、僕だけ方向が違う道を行く。

そいつが、3人を黙り込ませる。

いい天気だ。僕は”春の風が吹いていたら”を歌い始めた。クマガイは僕が歌い終わるのを

待って”春だったね”を音程を外しながら歌う。そして、3人で”春だったんだね~♪”と

歌い終わるころ、あの南ゲートにたどり着いた。

人のいない多目的広場は、ただのすり鉢のくさっぱらだ。僕らはあの日の土手に腰を下ろし

3人と過ごした3年間を思う。こいつらと出会わなければ、ここにいないし、違う道を目指して

今頃は、何をしてるんだろう?

結局僕らは、あれから拓郎のコンサートに行けてない。行けてないというより、拓郎はやらなかった。

やってはいても、”行ける”場所ではなかった。つま恋の拓郎がすべてであった。

僕らは、その晩静岡の旅館に泊まった。天井を見ながら、たわいのない話で夜は更けて行った。

 

それからの僕は、スーパーの検品のアルバイトに精を出す日々を送るのだった。

仕事よりも、僕はその人間関係で大いに悩まされることになる。

 

 

 

 

 

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